扇子の扇面である紙を骨に貼る際、昔ながらの糊を使用します。そして、この時に使用される糊は、デンプンを主成分としています。
しかしデンプンって、アレですよね?じゃがいもの実験で確認したアレ。
釣りが趣味の人なら、一度は使ったことがあるだろう練りエサの主成分として使われているアレです。
それが何と糊となって、扇子に使われているのです。今回はそんな、扇子の糊についてご紹介していきましょう。
扇子の糊であるデンプンとは?どんな物から採れるのか?
デンプンと聞くと、私の場合はじゃがいも!と浮かびます。しかし、コーンスターチと答える人もいるでしょうし、小麦粉と答える人もいるでしょう。
そもそも、デンプンとは一体何なのでしょうか?気になりませんか?
デンプンについて
デンプンは、植物が水や二酸化炭素、陽の光によって作り出す炭水化物です!アミロースとアミロペクチンと呼ばれる2つの高分子から構成されている白い粉末です。
と言うと、ややこしいですね。ざっくり言えば、植物が光合成をすることで生み出された成分で、デンプンはブドウ糖がたくさん集まったものです。
さっぱりしました。スーパーなどで販売されていますよね!でんぷん粉という形で。
ちなみにこのでんぷん粉、水の中に入れると沈殿します。かき混ぜると、全体と混ざりますが放っておくとまた沈殿します。このことから、水よりも重たいことが分かります。
さてこのデンプン。植物から採れる炭水化物と言うことが分かりました。しかし、すべての植物から採れる訳ではありません。
そこでデンプンが採れる代表的な植物を挙げていきましょう。
- じゃがいも
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じゃがいもから採れるデンプンはイモ類デンプンと呼ばれ、さつまいもやタピオカ、レンコンなどからも取ることが出来ます。
- とうもろこし
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とうもろこしから出来るデンプンは、コーンスターチと呼ばれ、穀類でんぷんに該当します。他にも、小麦粉やお米などがこれに当たります。
- 緑豆
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はるさめなどの材料である、緑豆からもデンプンが採れます。豆類デンプンと呼ばれる物で、エンドウやソラマメなどもこれに当たります。
- カタクリから
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そもそも、カタクリが植物であるとご存じない方もいるかもしれません。紫色の綺麗な花が咲く植物です。カタクリは野草類デンプンに該当し、お餅で有名なクズやワラビからも採れます。
- ヤシから
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サゴヤシと呼ばれる木からもデンプンが取れます。東南アジアでは、サゴ=デンプンと呼ばれます。これを幹茎デンプンと呼びます。
これらが代表的なデンプンの原料です。
日本ではイモ類や穀物。野草類が多いでしょうか?もっとも春雨も食べる機会が多いので、豆類デンプンも多く摂取している様に思います。
扇子に使われる糊の特徴は?デンプンはどうやったら糊になる?
扇子に紙の扇面を貼る際、でんぷん糊を使用します。
しかし、でんぷんがどうやったら、接着力を持った糊へと変わると思いますか?
・・・ちょっと考えると分かってしまいますけど、あえて聞いてみました。
デンプンの特徴を考える
先程、カタクリ粉もデンプンだよーってことが分かりました。カタクリ粉と言えば、とろみを出すために使われますね!
まず、片栗粉を水に溶かして、よく溶かしたところでお湯、もしくは暖かいスープや煮汁に放ちます。
そして、少し熱を加えると、とろみが生まれます。これがデンプンの特徴です。
水では溶け切らず、お湯だと凝固してしまう。片栗粉にお湯を入れると、すぐに玉になりますよね。あれは凝固してしまった状態です。
この片栗粉がとろみに変わる状態は、まさに糊のちょっと前の状態と考えられます。
デンプンが糊に変わるメカニズム
とろみが糊の一歩手前の状態であるならば、完全に糊へと変わるには、何をすれば良いと思いますか?
答えは、煮るです。
加熱するんですね。しかしそれだけでは、ちゃんとした糊へと変化して行くわけではありません。
煮ながら、練ります。すりこぎのような物でネリネリするんです。
- 練る理由
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練ると言うと、語弊があるかもしれません。混ぜるという方が正しいかもしれません。煮ながら混ぜると、デンプンが糊に変わっていく感覚が分かります。
この時、何故練っているんだろうか?と、疑問をお持ちになる方もいるかもしれません。
実際にデンプン糊を作っていると気付くかと思いますが、煮ているだけでも糊状になっていきます。
しかし、ただ煮ているだけでは、ダマが出来てしまう可能性があるため、注意しなければなりません。
その為に混ぜるのです。
ちなみに糊を作る際は、弱火で加熱し続けます。しばらく混ぜると角が立つようになります。こうなるとデンプン糊は完成します。
扇子に使われるデンプン糊の仕上げ方は?
煮終わったからと言って、デンプン糊が完成した!と終わらせてはいけません。最後にもう一仕上げする必要があります。
それが濾しです。これは簡単ですね。漉し器で裏ごしするんです。日本料理や和菓子の世界で見る濾し方です。
刷毛を使い、糊を漉し器の上に載せ、あとは濾すだけです。
基本的な扇子作りの為に使われる糊の制作は以上です。
ただデンプン糊は、水や熟成された糊を使い、その都度、接着力に変化をつけて使用されます。
ここまで来ると、扇子に使用される糊が元々デンプンだとは思えない状態となっていますが、古くから伝わる伝統工芸品ですから、制作に使える素材なんて限られていた訳です。
すると限られた材料から、接着力のある物を探した結果、見つかったのがデンプンだった。と言うことでしょう。
それが今にも伝わっていることを考えると、いかがでしょうか?糊一つとっても扇子には味わいがある気がしませんか?
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