日本の夏は昔からムシムシと蒸し暑く、当たり前のことながら扇子の需要が高まる傾向にあります。
扇子はコンパクトに収納できるため、持ち運ぶ上でも団扇と比べで手軽であり、風も優しく品の良い風情があるので、多くの方に親しまれております。
今でこそ、夏の必需品のひとつに数えられても違和感のない扇子ではありますが、少し前までは確実に衰退し続けていました。
そうした衰退中のことです。投扇興の間違った知識が広まったのは。
そこで今回は扇子で興じる対戦ゲーム投扇興についての知識から、その遊び方や加点方法、そしてちょっとやってみたい時の始め方などをご紹介します。
投扇興は庶民の遊び?溢れるユーモアが事実を物語る
投扇興と聞くと、何を思い浮かべますか?
私的には、京都のお座敷でした。
しかし、それは先入観であったということが、今回調べてみて色々と分かりました。
その最たるものが「発祥」です。
なんとこの投扇興は、舞妓さんなどがお座敷で興じるために作られたものではなく、普通の庶民が投壷と呼ばれる遊びを元にして、女性や子供でも楽しんで行えるように作った物だと言うのです。
さらに時代にも驚きがあり、雅な雰囲気がするので平安時代に出来た物かと思ったら、江戸時代に京都や大阪など諸説色々ありますが、関西地方で始まった遊びであると言うことが分かりました。
こうした事実を前にすると、気付くことがあります。それはユーモアがあること。そして想像力があること。
これは武家社会の中にいる人間には難しく、初めから柔軟な考えを持った人間にも難しい。
その中間にいる庶民だからこそ、生み出せるユーモアだと思うわけです。
ところで・・・今更ですけど、投扇興って何をどうする遊びなのか?触れておく必要がありますね。
- 投扇興とは?
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投扇興は扇子を用いた伝統的な対戦ゲームです。
枕と呼ばれる高さ17cm強の正四角柱の桐箱の上に蝶と呼ばれる的を置き、それに向かって扇子を投げ合います。
蝶はイチョウの葉形をした布張りの物が一般的で、両端に紐に結ばれた鈴が付いています。
また主役である扇子は、投扇興の専用の物が使用されます。
枕から撃ち落とされた蝶の状態を、源氏物語や百人一首に因んだ名前になぞらえて技名としており、難易度によって得点内容が変化します。
現在は全国に様々な流派が存在し、それぞれに得点や使用する道具のサイズなどが違っています。
これを踏まえて改めて、投扇興は庶民的なユーモアに溢れており、技名に源氏物語の一節や百人一首の一句を当てはめ、時代に対する遊び心や例え方そのものが面白いと感じました。
庶民発の遊びだから投扇興の技名は秀逸だと思う
先程も触れたユーモア溢れる投扇興の技名。
朝顔や鈴虫など、なんだそんなの普通じゃないか!って名前を聞くだけでは面白くもないと感じられるかもしれません。
しかし投げられた扇子や的、さらにそれぞれがどの様な形となったのか?から、源氏物語の一節や百人一首の一句からもっとも適したものをなぞらえて技名にしているのです。
これには発想力も必要ですし、想像力も必要です。そしてなにより、軽く雅な物を茶化すユーモアも必要です。
また、単純な知識も必要なわけで、それをあえて噛み砕いて伝えることを面白いと感じた庶民がいた言うことが興味深いです。
そのセンスが秀逸です。
これは判字絵からも知ることが出来ますし、江戸時代の日本人は優れた数学知識を持っていたことからも分かりますが、当時の庶民はユーモアをちゃんと理解して楽しんでいたと言えます。
恐らく現代の日本人よりも、想像力豊で面白い人達が多かったのではないかなーと考えたりします。
なお投扇興の技名や点数に関しては、こちらのサイトを参考にしてください。
投扇興をやってみたい時の準備
さてさて、最後に投扇興を実際にやってみたいと思った稀有な方のために、道具の準備方法をご紹介します。
遊び方に関しましては、先にご紹介したサイトや後ほどご紹介いたします動画などをご覧頂ければと思います。
またお金に余裕のある方は、京都で実際に体験されてみてはいかがでしょうか?
- 投扇興の準備
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絶対に必要な物は扇子です。しかし、正式な物は骨の本数を減らしたり、薄くしたりして軽量化を施しています。
そのため、既製品として販売されている扇子では難しく、またオリジナル制作したとしても難しいかと思います。
ではどうするのか?軽さを重視して、布扇子を採用されることをオススメします。
布扇子であれば片面貼りですし、和紙に比べ、不規則に風の抵抗を受けます。
次に的となる蝶を用意しましょう。
蝶の定義は布製であり、イチョウ型であり、両端の鈴が釣り下がっていることです。
これはボール紙やダンボールで代用できそうです。ただその場合、蝶の台座ちょっとした重りを付けておくとバランスが取れる上、風では枕から落ちない的が作れるでしょう。
問題はあまり重くしないことですね。扇子が当たって、動かないようではゲームそのものが成立しませんから。
最後に枕ですが、高さが17cmほどで正四角柱であれば、大丈夫なので代用品はいくらでもご用意出来ます。
周りに包装紙や和紙などを貼ると、見栄えのする枕を用意出来ます。
こんな感じで身の回りにあるもので準備を行い、ハンドメイド投扇興を楽しんでみてはいかがでしょうか?
最後に、投扇興の様子を伝える動画をご紹介して終わります。